燦燦舎のブログ

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7日間ブックカバーチャレンジ 1日でやってみた① 『あやしい探険隊 北へ』椎名誠

 

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『あやしい探険隊 北へ』椎名誠、情報出版センター局、1984

 

友人から「7日間ブックカバーチャレンジ」なるものが回ってきた。

毎日投稿するのが大変だなー、と手をつけられずにいたが、一気呵成に一日でやってみることにする。

題して「7日間ブックカバーチャレンジ 1日でやってみた」

 

何冊かの本を紹介する、という行為はこれまでも何回かやったことがあるのだが、今回は「あの日、あの時、あの場所で読んだ、身体の記憶に刻まれている本」というテーマでやってみたい。

 

人生で初めて活字の本を買った本屋は鹿児島市きしゃばの実家から徒歩40秒の場所にあった「井上書店」だった。

井上書店には兄弟で出没して、横目でいかがわしい書物のタイトルを眺めつつ延々と漫画を立ち読みしていた。最終的にはハタキをパタパタとかけられて追い出されるという、まさに古典的な町の書店だった。書店のオヤジさんが長居する我々を追っかけてくるときに平台に膝をぶつけて「痛え! 皿が割れた!」と大騒ぎしてたのを、大笑いしながら逃げた記憶がある。我ながら迷惑なガキどもだ。次の日も普通に営業してたから皿は無事だったようだ。

 

小学5年くらいのときに、その井上書店で椎名誠の『白い手』を買った。なぜ買ったのかは覚えていないが、そこから自分は椎名誠にずんずんと惹かれていった。椎名文学のなかでも『あやしい探検隊』シリーズが大好きだった。焚き火、天幕、飯と酒。憧れて、真似をした。いまも真似している。久しぶりに本を開いてみると、文章のテンポや写真のキャプションのつけ方などにも大いに影響を受けていたことがわかる。

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いちいち細かい笑いが含まれてる文章。好きです。

 

昨年は鹿児島で講演会が開催されて、初めて生椎名を見た。想像よりもかなりのじいちゃんだった。EDWINのCMでジーパンを竿に差し、モンゴルを馬で疾走するシーナさんの姿はなく心配したが、興が乗るにつれ話がどんどんドライブして若返っていった。大半は排泄物にまつわるバカ話で大笑いしたが、もう半分は原発や政権についての批判だった。

 

いつの頃までかは、わたしたちにとって本屋とは井上書店だった。出版社・南方新社に入って営業で井上書店に行くなんて思ってもいなかった。自分で出版社を起こして自分の本を置いてもらうなんて、もっと思ってもいなかった。

 

その井上書店も、いまはもうない。

 

 

 

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