雪の八重山に登ったこと。八重山が巨大風力発電で損なわれること。
ものすごく久しぶりにブログ書きますが、出版社ブログにも関わらず、まったく本とは関係ありません笑
先週の2月6日の日曜に、小5男子と小5女子(双子です)と6歳女子の三人を連れて、
子どもたちと山に登るのは実は初めて。
果たして俺は子どもたちを山頂に導けるのか!??
一抹の不安を抱えながら燦燦舎登山隊、八重山(676メートル。低い)にアタック開始です。
八重山公園から見た八重山。ぽっこりかわいいですね。粘度の低い溶岩が固まったので緩やかな形になったそうです
八重山、もういつかわからないくらい昔に一人で登った時があるんですが、けっこう険しい印象がありました。そんときは甲突池登山口から登ったからだったんですが、
今回は八重山公園近くの登山口から登りました。そちらから登るとそんなにキツくないんですよね。おお、これはおっさんでも登れそうだわい、としばらくてくてく歩いていましたが、、、しかし!
アタック開始。余裕をかます少年少女登山隊
起伏が緩やかなせいで、6歳児がだんだんと飽き始める!
アメをあげよう。
とうちゃんがリュックを持とう。
抱っこをしよう、などなどと懐柔政策を取りながらなんとか歩みを進めます。
(これは登れんかもしれん)と不吉な予感がしてきたところ、
上からパラッ、パラッ、と何かが落ちてきました。
氷です。
樹上が凍っていたのが、太陽熱で溶けて落ちてきたんですね。
そんな音、山を登ってきて初めて聴きました。
手に乗せればすぐに溶ける氷。
儚いですね。だけどきれいです。
鼻くそ、ではなく雪を父親につけようとする少女
そう言えば、降りて来る登山客の皆さんから「上に行けば雪だよ!」と声をかけていただいていました。こんな快晴なのに?と訝しんでいたのです。
ですが、登っていくにつれて雪の姿が現れる。
子どもたちもとテンションアップして、雪に足を踏み入れる。
(靴がぐしゃぐしゃになるよ〜という親父の心の声)
山頂付近は鹿児島とは思えない雪景色でした。
ああもう、これだけでも子どもと来た甲斐があったな、と。
雪と苔
雪の精のようなわたしの娘。かわいいです
拍子抜けするくらいの緩やかさを保ったまま、山頂に到達。
我等燦燦舎登山隊は登頂に成功しました。
90分くらいかかってしまったけど、隊員が無事で何よりです。
山頂では妻が握ってくれたおにぎり(いつもありがとうございます)と、茹でたソーセージ、インスタントの味噌汁。日々野鮎美(『山と食欲と私』信濃川日出雄)のように山頂グルメを子どもに披露したいとこではありますが、これだけでも無上にうまい。
ひとしきり雪合戦して、桜島に向かって吠えます。(「ヤッホー」「オッケー」「オケツー」などと叫ぶ。長男作の「お尻から作られる、天然ガース!」が一番傑作でした)
いい時間になってきたので、緩やかな下り坂を、おしゃべりしながら降りました。
登山っていいなあ。家族いっしょだともっといいです。
雪を親父にぶつけてくる少年。やめれ
帰りにスパランド裸・楽・良(考えてみりゃ変な名前です。ららら でよくねえか、と)で温泉に入って終了! ありがたい休日だったなあ、、、
で終わりたかったんですが、この話には、まだ続きがあるのです。。。。。
昨日の2月12日、友人から「是非いっしょに来てくれ」と誘われた説明会。
配布資料
事業者は日本風力エネルギー株式会社。親会社はシンガポールの会社だそうです。
高さ最大153m(アミュプラザの1.5倍!)の風力発電機を9基、八重山を中心に設置する計画ですが、合計して平川動物園並!の広さの土地を切り開くということです。
山登りルートに沿って建つようなレイアウトですね。
事業所の説明に際し、地元の方の不安の声が上がります。
ある人は騒音が不安で、いちき串木野羽島の風力発電が建設されている付近に聞き取りに行ったそうです。「特に夜がうるさくて眠れない」という方がいらっしゃるとのこと。
事業者からはいかに音が静かだ、生活音と変わらない、との説明があるのですが、「で、結局音はするの?」と問われたら「音がしないとは言っていない」とのこと。
日本には今回の計画と同等のサイズの風力はまだないらしく、他県で建設中とのことです。
「他のところが建って検証してからにすれば」との意見も。もっともです。
ある女性からは「大雨や土砂崩れが心配」という意見も上がりました。
事業者からは「最大限の対策をしています。しかし絶対大丈夫とは申し上げられない」とのこと。正直ですね。
自分が心配だったのは景観でした。
地元の方から「準備書では、写らないとこからしか撮ってないじゃないか!」と怒りの声が上がりました。
そうなんです。おかしいと思っていたんです。
地元の方々しかいない公民館で、あんた誰?という完全アウェーのなか、自分も挙手をしました。
筆者「この山頂公園は、登りきって最後に桜島とか見える、あの眺望の素晴らしい場所ですよね?」
日本風力エネルギー株式会社「そうです!」
ページ左上の方です。山頂公園。登山の最後に桜島に向かって叫ぶことができます
拡大図。ブレード旋回範囲がほぼ山頂公園にかかっています
筆者「ここは登山客がいちばん楽しみにしているクライマックスのような場所ですが、ものすごく近くに風車がありますよね。ここからどのように風車は見えるのでしょう?」(ブレードが広場真上をかすめるくらい近いです。怖いわ)
日本風力エネルギー「・・・えー、調査をした日本気象協会さん、いかがでしょうか?」
日本気象協会「こちらからの見え方については調査をしてません」
筆者「!!!(一瞬絶句)。えーっと、登山をしてもっとも大事な場所からの景観が検討されていないのには理由があるのでしょうか?」
日本気象協会「調査が足りませんでした。今後検討します」
!!!(絶句2)
なんというか、開いた口を閉める術を教えっくれ、ちゅうやつですね。
日本風力エネルギーの担当さんは登山が好きで八重山も何度も登っているとのことでしたが、何を考えているんでしょう。
事業者の準備書の「景観」の欄をを見てみると、ほとんどの場所から「発電機は見えない」ことになってるんですよね。
これ。
ここもそう。
ここも見えない。
見えんとこから撮ってるだけじゃねえか!と叫びたくなります。
ここまでくると、「山頂公園が外されていた件」にも恣意的なものを感じます。
準備書においては、八重の棚田からだけが大きく見える。となっています。
準備書より。赤線は筆者
こちらは事業所による準備書ですが、景観を評価するための垂直視野角という指標があります。八重の棚田からは7.6度。すでに「上限か」とされる6度を超えていますね。(上記図赤線を参照ください)
再度質問をしました(だけど最後の最後に回されて、なかなか質問させてくれませんでした。早速要警戒リストにノミネートされたんでしょうか)。
筆者「この山頂公園からの垂直視野角は何度ですか? だいたいの予想でも構いません」
日本気象協会「・・・・・・・いまはわかりません」
その時、参加者さんから「自分が計算したら69度だった!」とのお声が。
もちろん正確な計算をしなければわかりませんが、
しかし、八重の棚田よりもはるかに近い場所に建つわけですから、見上げるような大きさであることは間違いありません。
というか近すぎる。
山頂から撮った風速計です。これでも60m。風力発電機は2.5倍の150メートル!
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22年2月14日 追記
読者さんから「県の風力発電ガイドライン」というものがある、と教えていただきました。
こちら一部を抜粋します。
ウ その他,周囲の景観との調和を図ることとし,特に次の点に留意すること。
(ア) 位置については,山の稜線を乱さないようにすること。
・「地域固有の景観」とは,道路その他の公共の場所から公衆によって容易に望見される 景観で,地域内外で一定の知名度を有する,又は地域住民が特別な愛着を持っている,
地域の代表的な景観をいう(山並みや海岸線など)。
鹿児島県/「鹿児島県風力発電施設の建設等に関する景観形成ガイドライン[Q&A]の改定」について
稜線を思いっきり乱している気がします。ガイドラインに引っかかるのではないでしょうか。
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八重山ですが、子どもと登って感じたのは、行き交う登山客の多さでした。
犬の散歩で毎月来る、子どもを二人連れたお母さん、年配のご夫婦。
それぞれが真冬の雪に笑みを浮かべ、心地よく疲れる。
大した装備もいらないので初心者も登れる。
子どもにもじいちゃんばあちゃんにも、やさしい山です。
決して派手な観光地ではありませんが、登ってみてしみじみと、鹿児島の宝だと思いました。鹿児島市民の共有財産であり、愛されている山です。
景観、準備の杜撰さ、説明の乏しさ。
事業者からは地域を分断してなんとしてでも開発をしようという意図すら感じます。
山頂から見上げた空は、空だけであってほしいのです。
燦燦舎 代表 鮫島亮二
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2月14日締め切り! というか明日? しかも郵送のみ受付? メールはないのか?
受け付ける気があるのか? という気がします。
準備書を読み込まなくても、「不安だ」とか「反対」だけでも十分な意見です。
みなさま是非出してください。
こちらは鹿児島市ホームページから転載!
住所、氏名、環境の保全の見地からの意見を記入の上、縦覧場所に備え付けの意見書箱に投かん、
または、日本風力エネルギー株式会社薩摩事業所へ郵送
〒896-0046鹿児島県いちき串木野市西薩町17-41
令和3年12月23日(木曜日)から令和4年2月14日(月曜日)まで
当日消印有効
詳しくはこちらは事業所のホームページを!
(仮称)日置市及び鹿児島市における風力発電事業環境影響評価準備書の縦覧について - ヴィーナ・エナジー (Vena Energy)
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燦燦舎は鹿児島の小さな出版社です。