燦燦舎のブログ

燦燦舎(さんさんしゃ)は鹿児島のあたらしい出版社です。 HP→ san-san-sha.com

2014年の地方・小出版社

2014年もあと7時間余りです。

みなさま素敵な年の瀬をお過ごしかと思います。

 

今年始めたばかりの、鹿児島の小さな出版社・燦燦舎も

おかげさまでどうにか年を越すことができそうです。

本当にありがとうございます。

 

ぼくたちは今年、

『桜島! まるごと絵本』

f:id:san-san-sha:20141231170935j:plain

そして『ぐるっと一周! 鹿児島すごろく』

f:id:san-san-sha:20141218223410j:plain

という二つの本を世に送り出すことができました。

ありがたいことに、どちらもよい評価をいただいております。

 

そんな燦燦舎ですが、ここで出版活動以外のお知らせをさせてください。

みなさま、本には「奥付」というものがあることをご存知でしょうか?

 

お手元の本の、裏表紙を開けたところに大体記載されているんですが、

「著者名」や「発行所」「発行者」「発行の日付」「何回増刷したか」

などが書かれた、いわば本の身分証明でしょうか。

ぼくなんかは、本を手に取ったらまずそこから見て、

「58刷り、すげーうらやましー」

と、こっそりと、他の版元さんをうらやましがるわけですな。

そんな、本の隠れた重要ページが「奥付」です。

 

燦燦舎の本の奥付をご覧になってください

(すごろくは、箱をパカっと開けたところです)。

「燦燦舎の本の売上の一部は、

 福島県の子どもたちの健康を守る活動に使われます」

と書かれています。

燦燦舎には、社屋も社歌も社則もなにもありませんが、

会社を立ち上げるときに

「福島の子どもたちが放射能から受ける健康被害

 少しでも減らすために、売上から寄付をする」ということだけは決めました。

 

ということで、まずは鹿児島県で福島の子どもたちの

保養受け入れ活動などをしている「ママトコかごしま」さん

http://nonukesmam.exblog.jp

 

に、2万円寄付しました。ママトコかごしまさんは、ぼくも立ち上げに関わっている団体なのですが、2011年の東日本大震災のあと、鹿児島に避難・移住して来るお母さん・子どもたちをサポートするために設立された非営利の団体です。全員ボランティアで、年に一度「保養プロジェクトかごしま」と称して、福島の子どもたちを鹿児島に招待しています。

2015年春にも、第3回の保養プロジェクトが開催されます。

 

f:id:san-san-sha:20141231171050j:plain

ママトコかごしま代表の井上さんとぼくとぼくの娘

 

ママトコかごしまさん以外には、

福島の団体にも鹿児島からお米や野菜を年明けには送ります。

 

たかが2万や3万ですが、ぼくらみたいな超弱小出版社にとっては、

文字通り「血」を流して稼いだお金です。

自慢じゃないけどお金なんか当たり前のようにありません。

 

ですが、

ぼくは、鹿児島で2008年から反原発運動に関わってきて、

2011年の福島の事故のときに「自分は原発を止められなかった」

という大きな責任を感じています。

現にいよいよ、甲状腺ガンが増えてきている。

「ただちに影響がない」時間はもう過ぎ去ってしまいました。

こんな日本にしてしまった大人として、

いくばくかでも責任を取るため

(簡単には取れないことはわかっている)に、寄付をします。

今後はこのような形でみなさまに報告することはしませんが、

燦燦舎が続く限り、続けます。

 

いいことは、タイガーマスクのように黙ってやるもんですが、

無粋ついでに、なぜわざわざ報告をしたかというと、

「福島」という日本の大人全員が起こしてしまったこと、

かつ巧妙に忘却の彼方にされつつあることに対し、

より多くの人に向き合って欲しいと思ったからです。

商売の規模や業態に関わらず、

多くの経営者が福島の子どもたちの支援をすることが、

2015年以降の日本をよき方向に動かしていくと考えます。

もちろん、既にたくさんの方が支援をされていることは知っておりますし、

そんな方がたに対しては、大きな敬意を払っています。

 

「そげんことを言っちょたら商売に響くが」

とまあ鹿児島弁で言われてしまうんですが、

ぼくら小出版社が言論の自由を失ってしまったら世界の終わりです。

大きな企業がスポンサーをしている

大マスコミが言えないことや、大出版社ができないことは、

小出版社が言う。やる。

時の為政者が法律をいじって、言葉が檻に入れられても、

ぼくらが言う。書く。

 

鹿児島に南方新社。福岡に石風社。沖縄にボーダーインク

山口にみずのわ出版。北海道に海豹舎

九州、全国に輝かしい先人がいる。

ここ数年で、東京を中心に

ミシマ社、ナナロク社、夏葉社など、

1970年代生まれが始めた出版社が、凄まじい勢いです。

そして、福岡には忘羊社という、

すばらしい編集者が興した出版社ができました。

ぼくらの世代が、紙の本という使い旧されたメディアを選び、

東京だけではなく、それぞれの地方で生きていく時代がきています。

ぼくも、鹿児島という辺境で、その役割を全うしたい。

 

大きな「壁(安倍?)」に押しつぶされそうになっても、怖くはありません。

ぼくらの最大のスポンサーは、本を買ってくださる読者一人ひとりです。

読者のみなさんの顔をできるだけ鮮明にイメージする。

その人に手渡すための本を魂を入れてつくる。

届けるための方策を、全身で考え実行する。

それができれば、どんな時代が来ても、

この身の丈でいる限りは続けられる。

そして、ここ鹿児島にはこんな名もない出版社を受け入れてくれる、

文化の懐の深さがあることを実感した一年でした。

 

この一年、燦燦舎の本に関わってくださったすべてのみなさま、

本当に本当にありがとうございました。

 

来年も、燦燦舎は全力です!

よき2015年と、未来を迎えましょう!。